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トランプ政権:米国と世界の行方について講演を聴く

  • 執筆者の写真: sandayu9
    sandayu9
  • 2017年1月7日
  • 読了時間: 3分

6日、日本記者クラブで米プリンストン大学のクリスティーナ・デイビス教授の講演があった。同クラブのサイトで、動画を含む詳報が数日以内に掲載される予定。7日付では日本農業新聞が要旨を報じている。私ではなくて、別の若い記者が書いた。

この日、教授は3つのポイントに分けてトランプ政権の通商問題についてコメントした。

第1は、欧米やフィリピンで広がるポピュリズムのうねりとの関連。第2が不確実性。はたして彼が「公約」を守るのかという視点だ。第3に日本を含めた東アジアへの影響だ。

詳しくは動画を見てもらうとして、興味深かった部分のいくつかを順不同で書く。

彼女は「現在の米国経済が悪くない」と分析している。失業率や新たな雇用が生まれている数字を挙げた。「輸入」を悪者にすることが自由貿易反対の流れに結びついたと説明した。「グローバリズム」という言葉の裏側に、米国や欧州では移民や難民などの経済以外の大きな課題があることも指摘した。たしかに、そこは日本とは違うところだろう。

政治学者の「受け売り」という前置きをした上で、今回の選挙結果の分析も試みた。

きわめて面白かったのは、共和党の支持者の多くが近年、急速に反自由貿易に傾いていて、反対に民主党支持者の多くが自由貿易を支持しているというもの。ネットで探してみたが、分からなかったので、教授に所望してみるつもりだ。

「アメリカ・ファースト」という言葉の由来も、1940年代以降の政治の流れの中で解説した。必ずしも保護主義とは同義語ではないという。

東アジアとの関連でTPPについて触れた。教授はプロTPPの立場から、地域で不安要素になっている中国に対抗していく地政学的な理由を挙げ、もう一度生き返らせるべきだと強調した。説明の冒頭で「TPPは死んだと言われるが、私としては冷蔵庫に入れたと思っている」と述べ、未練があるようだった。トランプのような優れたセールスマンは、ちょこちょこと手直しすることで大げさに「アメリカにとって良くなった」とTPPを復活させる可能性があるとも述べた。

講演の前に、教授や講演の司会をした時事通信社の軽部謙介さんらと昼食を取った。その場でも、米国民の不満が自由貿易に向かっていることの「不合理」を説いた。根っからの理想的自由貿易の信奉者なのだろう。

講演後の質疑の中で「いろいろ教授は説明したが、自由貿易そのものへの不満は強いように思う。あなたは自由貿易の将来をどう考えるか」と聞いてみた。予想通り非常に理知的な説明で自由貿易そのものの大切さを強調した。ただ、欧米でうねりのように押し寄せるグローバリズム反対の動きを前にすると、リベラルで自由貿易の理想を信じる教授の言葉通りに世の中は動かないのではないかと思った。

最後になぜ、私がデイビス教授を知っているのかという点を説明する。彼女が1998年にフルブライト奨学金を得てハーバード大学の大学院生として日本に滞在したとき、調査先を紹介したり、秋葉原にある日本農業新聞の資料室に通って過去の新聞切り抜きを読む手伝いをしたりした。私もお世話になった同奨学金事務局から協力を依頼されたのがきっかけだった。それ以来、来日したときや私が米国に行ったときに食事をしたり、話を聞いたりしている。デイビス教授はいつも大和撫子のような丁寧な受け答えが印象的な方だ。


 
 
 
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